「カドカワ・トラベル・ハンドブック」から「個人旅行へ」

当社は旅行ガイドブックの制作会社として1987年に創業しました。2017年で30周年です。
この30年、私たちは、旅行ガイドブック業界のなかで、たえず先駆的な役割を果たしてきたと自負しています。
かつてガイドブック業界は、当社が新しいシリーズを創出し成功すると、それを真似たシリーズを次々に刊行する、ということを繰り返してきました。
1980年代のベストセラー「カドカワ・トラベル・ハンドブック」シリーズがそうでした。
1990年代のベストセラー「個人旅行」シリーズもまた同様です。
これらのガイドブック・シリーズは、それ以前にはなかった新しいコンセプトを持っていました。
その成功は、日本におけるガイドブックの、ひとつの潮流をつくってきたように思います。
ただ、私たちは、新しい流れをつくったとはいえ、そこに満足してとどまることはありません。
渾身の力を振り絞って取材編集制作した、あの「個人旅行」シリーズの刊行からはとうに撤退しました。
やがて「個人旅行」シリーズは、書店の棚から姿を消すことになります。
古い旅行ガイドブックは、旅のスタイルの変化とともに淘汰されるほかありません。
淘汰させることもまた、私たちの役割なのです。
すなわち新たなシリーズの創出です。
新しい旅行情報誌へ。昭文社から、JTBパブリッシングへ

当社の使命は、たえず新しい情報誌を創出することにあります。
2003年4月には、ぴあ社で「TRAVEL STYLEBOOK」シリーズの刊行を、2003年7月には、成美堂出版で「いい旅・街歩き」シリーズの刊行を開始、2004年春には、やはり成美堂出版から新しい国内旅行シリーズ「大人の街歩き」の刊行も開始しました。
さらに、2012年には、しばらく遠ざかっていた昭文社と再会して、画期的な海外旅行シリーズ「トラベルデイズTRAVELDAYS」の刊行を開始、同時に国内旅行シリーズ「ぶらっと散歩コース」などを次々に刊行するにいたりました。
また2016年にはTAC出版から、中高年読者層に向けた、やや贅沢な旅行の情報を掲載した国内旅行シリーズ「おとな旅プレミアム」を刊行開始。これは2017年7月には32巻を数えました。
国内・海外ともに、これらのシリーズが改めてこれからのガイドブック業界に影響を与え、 リードしていくことになるでしょう。

また、当社では、さまざまなムックも編集制作しています。
かつては昭文社の旅行ムックシリーズ「まっぷるマガジン」を一手に引き受けて編集制作していましたが、その後は成美堂出版刊行の旅行ムック「ベストガイド」シリーズや「大好き」シリーズとともに、グルメ本「いま評判のうまい店」シリーズなど幅を広げ、ぴあ社の海外ムックを含め、年間70~80冊のムックを編集制作してきました。
なかでも、成美堂出版での制作ムックとしては、「未来地図」がベストセラーとなり、またやはりベストセラーとなった「東京山の手散歩下町散歩」は散歩をテーマとした書籍の先駆けとなりましたし、「江戸散歩東京散歩」もまた、江戸をテーマにしたガイドムックの火付け役となり類を見ないロングセラーとなりました。
その後、成美堂出版と袂を分かったあとは、前述のガイドブックシリーズとともに、昭文社刊行のムック「まっぷるマガジン」の主力商品を国内海外ともに全面改訂を行ない、新刊の刊行と相俟って立て直しに尽力しました。
旅行書のみならず、2011年には「工場見学」シリーズを刊行して、これは首都圏・関西圏でベストセラーとなりましたし、成美堂出版時代のノウハウを生かしてグルメムック・シリーズも刊行しました。
こうして、当社は30年を経てきたわけです。

さて、2017年1月には、長年のパートナーだった昭文社から離れ、同年7月には、「るるぶ」を中心にさまざまな旅行書を刊行し続けてきたJTBパブリッシング社と業務契約を結びました。
30周年を機にJTBパブリッシング社とともに歩むことになったわけです。
8月には海外旅行ムック「るるぶアメリカ西海岸」や国内旅行ムック「温泉ガイドシリーズ」を改訂刊行し、9月には「るるぶロサンゼルス」や「るるぶ北陸ベスト」を改訂刊行するなど、新しい編集制作事業の端緒につきました。
今後はJTBパブリッシング社から刊行されるムックやガイドブック・シリーズの、改訂版や新刊書籍に、全面的に携わっていくことになります。

日々苦しい編集作業が続きますが、新しい出版社と手を携えながら、これらの書籍が豊かな旅文化と新しい街文化に少しでも貢献できれば、私たちの思いは叶うことになります。
出版社としての出発

2004年夏、編集制作業務とは別に、出版業務を開始しました。
これまでは編集制作の現場として仕事をし、出版は角川書店や昭文社、成美堂出版等で行なわれてきたわけですが、独自の出版物を持つことにしたのです。
当初は、既刊の出版物を見ていただいてもわかるように、音楽や劇画など、編集制作業務とはまったく違った、さまざまなジャンルを手がけてきました。
原則として、国内外の旅行ガイドブックやガイドムック、タウン情報誌などは、従来どおり編集制作業務のジャンルとし、出版の予定はありませんが、旅行に関していえば、「絶景本」などとともに旅の副読本ともいえる書籍を手がけたいと思っています。
編集制作業務によって力を削がれる面も多いのですが、今後は出版部門もさらに事業を充実させ、新しい試みに挑んでいきたいと考えています。